事業承継の実務に携わる金融機関の方、法人分野で活躍されている保険プランナーの皆さんに大きな影響がある、
法改正が予定されています。
それは、民法における特別受益の取扱いについてです。
これまでの法律では、相続人に対して行われた贈与は「特別受益」となり、
時間的制限なく、果てしなくさかのぼって遺留分減殺請求を認めるというルールになっていました。
この考え方は、平成10年3月24日 最高裁の判決で示されています。
しかし、この時間的制限なく果てしなくさかのぼるというルールが、トラブルにつながるケースがこれまで多々ありました。
あるスーパーマーケットの創業者の方が、亡くなる20年前、60歳のときにご長男に自社株を贈与していた事例です。
この創業者の父から早めに自社株と事業を引き継いだ長男は、多店舗展開で業績を急拡大し、10年で超優良企業となりました。
その後、この父親が亡くなり、長男と二男で遺産分割が行われます。
この際、20年前に贈与を受けた自社株は、遺留分の対象としてカウントされ、遺留分減殺請求を受けることとなりました。
さらに、遺留分の計算にあたっては、20年前の低い株価は関係なく、「相続時の時価」で計算されるのが原則です。
この例のように、後継者の努力によって上がった株価が、遺産分割で大きな問題となるケースが、実は多発しているのです。
これに対し、2018年3月13日に国会提出された民法改正案では、
「相続人に対する贈与は、相続開始前の10年間に行われたものに限りその価額を、遺留分を算定するための財産の価額に算入する。」
との規律を付け加えるものとなっています。
これによって、相続人に対して、相続開始より10年以上前に贈与された財産は、
遺留分を算定するための財産の価額に算入されないことになるでしょう。
10年でも長いと思われるかもしれませんが、事業承継対策の実務においては画期的な改正となりそうです。