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コラム 特例事業承継税制でオーナーの相続対策は万全なのか?



~目次~

1.はじめに

2.事業承継税制とは?

3.100%納税猶予は期間限定

4.これで会社オーナーの相続対策は万全か?

 

1.はじめに

突然ですが、もし、あなたのお父さんが、小さな出版社の創業社長で、会社の株式を持ったまま突然亡くなった場面を想像してみてください。

会社は、未上場ではありましたが、千代田区神田錦町に本社ビルもあり、創業30年で、毎年3千万ほどの利益が出ていました。

株価はなんと10億円になっており、相続税はその半分の5億円となりました。

相続人は、あなた一人です。

 

悩んだ結果、会社の業績も安定しているので、今の仕事を辞め、父親の事業を継ごうと考えました。

事業の承継に対するヤル気や自信は十分あるのですが、このようなケースで、

相続税の納税資金5億円は、どう準備したらいいのでしょうか?

 

 

 

未上場会社オーナーの相続税の納税には、次のような方法が考えられます。

 

 未上場会社オーナーの相続税の納税方法

①銀行から借りる

②会社からの退職金で支払う

③相続した株式を会社に買い取ってもらう(金庫株)

④延納、又は物納する

 

上記4つは、実際に相続税を納付し、会社を承継する方法になります。

 

一方、事業承継税制のうち、平成30年(2018年)に創設された「特例」を使うことで、最終的に相続税の「免除」を受けるという手段ができました。

相続税を納付せずに事業を承継する、というのが上記に次ぐ⑤番目の方法となるのです。

 

 

2.事業承継税制とは?

 

未上場会社のオーナーが後継者に「株式」を相続又は贈与により承継する際には、相続税や贈与税がかかります。

事業承継税制とは、この相続税や贈与税の納税を、一時的に猶予する(保留にする)制度をいいます。 

 

そして、その後、その後継者がその株式を持ち続け、事業を継続するなど一定の要件を満たしたまま死亡した場合等には、納税が免除されます。

 

 

 

 

3.100%納税猶予は期間限定

 事業承継税制は、平成21年(2009年)に創設されました。

 これまでの制度(※)では、承継する株式に係る納税額の最大約53%しか猶予を受けられず、また、承継後5年間は、相続時の従業者数を平均8割維持できなければ、猶予された税金を全額納付しなくてはならないなど、制限がありました。

 メリットが小さい割に、厳しい条件が課されていたのです。

 

 ところが、平成30年度の税制改正による「特例」では、株式の承継に係る相続税・贈与税が100%猶予され、更に、従業者の雇用維持に関する要件も大幅に緩和されました。 

 

但し、この「特例」は、平成30年(2018年)1月1日から平成39年(2027年)12月31日まで10年間の相続・贈与に限られる、という期限付きの制度になっています。

 

 

 

4.これで会社オーナーの相続対策は万全か?

 さて、これであなたの相続税の心配は、なくなったかもしれません。

 しかし、未上場会社のオーナーの相続問題は、これで全て解決されるのでしょうか?

 

 仮に、その会社の株式があまり仲の良くない親戚や、取引先等に分散している場合には、この事業承継税制の適用を受ける前に、現経営者が買い取った方が、株主の整理ができ、更に、税負担も有利になる場合があります。

 

 また、事業承継税制の適用には、様々な要件がありますが、株式だけではなく、代表権(代表取締役)を後継者に譲ることが、要件の一つとなっています。

 会社の代表者(経営者)は、一朝一夕で務められるようなものではありませんので、準備期間が必要です。

 

 今回の100%納税猶予となる特例は2023年3月末日までに「特例承継計画」を主たる事務所の所在地の都道府県に提出することが義務付けられています。

先延ばしにしていた相続・事業承継の課題解決にむけ真剣に取り組む、良いきっかけになるのではないでしょうか。

 

事業承継税制の特例については、こちらの講座でもお伝えしています。

ぜひご覧ください。

 

[イメージで理解する事業承継税制の特例]

https://z-lab.jp/con/257?

 

 

 

 

(※)これまでの制度も、税制改正によってなくなったわけではなく、「一般措置」として存続しています。

 

担当 萩原総合税理士事務所  税理士 萩原睦美

公開日: 2018年08月06日 00:00

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