最近、地方銀行の職員やプランナーの皆さまから、
業歴の長い優良企業の名義株に関するご相談をよくいただきます。
今回は、この名義株の問題とアドバイスの方法についてお伝えします。
~目次~
1.名義株とは何か
2.名義株の対策方法
3.買取時の株価について
1.名義株とは何か
「名義株」とは、自社株の形式的な名義だけを親族や取引先などにしていながら、
実際は、金銭の授受が行われておらず、真の株主はオーナー社長のままの状態やその株式のことをいいます。
旧商法では、株式会社の設立に7人以上の発起人が必要とされていたことから、
創業者が知人や従業員から名前を借り、それが長年残ってしまっているケースが多くみられます。
団塊の世代の経営者の高齢化も進んできますので、
名義株の問題があれば、少しでも早く対策に動くことが必要です。
2.名義株の対策方法
名義株であることが証明でき、名義人と真の所有者で合意できるのであれば、株式の名義変更は一般的に可能です。
オーナー家としては、「名義人が株を戻してくれないのではないか?」と心配になる場面ですが、
多くのケースでは、名義人側の「名義株なのに相続税が課されるかもしれない」、という不安が勝り、
名義変更に応じてもらえることが多いようです。
一方で、この名義株が、既に相続されていたり、配当が出されているなど、
名義株であることが証明できないケースでは、株の買い集めをせざるを得ないケースもでてきます。
こうなると、金銭的な負担や税金など、課題がたくさん出てきます。
3.買取時の株価について
非上場株式の税務上の評価は、原則的評価方式と特例的評価方式がありますが、
通常、オーナー家が買い取る場合の株価は、原則的評価方法(類似・純資産をもとにした評価)が適用されます。
一方で、従業員や従業員持株会など少数株主が取得する場合は、特例的評価方式である配当還元評価(低い評価)が使えることとなります。
オーナー家の方は、できるだけ株式を買取る場合も低い評価で買取りたいと考えますが、
税務上の評価では、原則的評価方法が適用されるのです。
よく、オーナー家の方が買い戻す場合に、「低い評価で買うことはできないのか?」というご質問をいただきますが、
お互いに合意すれば、低い株価で取引することは問題ありません。
低い株価で売買する場合には、原則的評価方法との差額に対する贈与税が、株を購入したオーナー側に発生するのです。
他の株主との関係で、高い買取り実績を残したくないというご相談も多くありますが、
オーナー家で贈与税を負担する覚悟さえあれば、対応は可能といえるでしょう。
以上のように、自社株集約のアドバイスのポイントは、オーナー家の外に出るときは低い評価が使え、
オーナー家が買い戻すときは高い評価になってしまう、この「評価の差」にあります。
ちょっと理不尽な制度に思えますが、この思いを共感できることが、営業上の差別化につながるでしょう。
萩原綜合税理士事務所 萩原 睦美